ピノッキオ

2006年01月17日 | 神戸、兵庫

神戸高校から新神戸まで歩きました。次の目的地は山の手にある小さなレストラン。そこでシーフード・ピザを食べました。僕は以前この小さなレストランに来たことがありました。

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2004年8月22日(日)の日記から。

昨年の東京遠征の折に新幹線の中で村上春樹の『辺境・近境 写真篇』を読んだ。『辺境・近境』はずいぶん前に読んでいたものの、写真篇を手にしたのはその時が初めてだった。中の文章は『辺境・近境』の抜粋だったが、松村映三(エイゾー)による写真が新たに加わり興味深かった。

「神戸まで歩く」がグッときた。モノクロームで撮られた写真を見ていると、その場所を一度歩いてみたいという欲求に駆られた。最後にハルキさんは三宮の山の手にある小さなレストランのことを書いた。ピザを注文すると「あなたの召し上がるピザは、当店の958,816枚目のピザです」という小さな紙片がついてきたという。それを読んだ時、このレストランには是非行ってみようという気になった。

ネットで検索してみると案外簡単にその小さなレストランは見つかった。どうせなら友人を誘って行ってみるのもいい、そう思って久し振りに連絡してみた。快い返事があり、計画はとんとん拍子で進んだけれど、いろいろな事情で中止さぜるを得なくなった。今年の初めのことだ。「またいつか」。そう思って今日まで時間は過ぎていった。

夏の午後、特に用事があったわけではなく、なんとなく三宮までドライブした。昔はよくこんな感じでエアチェックしたラジオ番組を聴きながら車を走らせた。家から三宮まで小一時間、ちょうどよい距離なのだ。今日は佐野元春の『THE SUN』を車の中で聴いた。

トア・ロードを歩いた。Paul Smithの路面店は「この6月の末で休業することになった...」と張り紙があった。10年くらい前に僕はここでカフスを購入した。ビートルズの立体写真のもので、ポールの若い頃の笑顔は角度を変えると"I'M PAUL"という文字になった。「いつかまた再会しましょう」と張り紙は続けていた。新装開店してまた再開するつもりということだった。

小さなレストランは更に坂を上った先にあった。僕はカウンター席に座り、村上春樹のようにシーフード・ピザを注文した。車を運転して来たのでアルコールは飲めなかった。代わりに冷たい烏龍茶を頼んだ。

ウェイターはピザが焼きあがるまで15分かかると言った。僕は店内を観察して過ごすことにした。古いオルガンがあった。しかしそれは誰かが弾くために置かれているわけではなかった。僕はなんとなく船乗りが集う風景を想像した。おかしなものだ。港からここまでずいぶんと距離があるので、実際に船乗りなどいるわけがない。真夏の幻だ。店内にはジャズがながれていた。やがて曲はコルトレーンの「My Favorite Things」になった。この小さなレストランがハルキさんのお気に入りだったわけがわかったような気がした。

焼きあがったピザには1087960枚目と記された紙片がついていた。
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僕たちが食べたピザは1093989枚目でした。5ヶ月の間に6029枚焼かれたわけですね。

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